マナーとは、いったい何なのだろう。
 一般的には、社会生活全般における道徳やモラルといった
 コミュニケーション能力と密接に結び付いたものであり、
 人と人とが交流をする上での作法である。
 又、「良いマナー」の必要条件とは、決して知識や技術ではなく
 ”自分とは異なる考えを持つ他人と上手に接する能力”であると考えられる。
 マナーという言葉の意味合いには、
 「そんなの言わなくても判るでしょ?。そりゃ常識じゃん。」というのが含まれ、
 この意味合いを考えれば、
 人々の間に一定の認識や合意があることに対してマナーという概念が通用するのだ。

  そう、ゴルフにもマナーがある。大きく分けると、
 「危険防止」、「他人への思いやり」、「コースの保護」、「プレーの公平」の
 この4つを柱にして出来上がっているが、
 具体的には、同伴競技者やキャディさんへの挨拶、喫煙場所や素振りの場所の確認、
 キャディさんの指示に従う、危険球の際の報告義務、他人のショットの際は喋らず動かず、
 次打席地点へ行く際は早足、予備球を持つ、etc…。書いていくとキリが無いほどである。
 このようにマナーでガチガチに囲まれたスポーツのように思われがちなスポーツなのだが、
 あくまでも常識の中でのお約束ごとなので、
 普通の人間であれば、さほど問題は無いと思われるのである。

  しかし、その「常識」が通用しない奴等が居る。キャディさんの指示に従わず、
 前の組に打ち込んだり、堂々と咥えタバコでフェアウェィを歩き、
 ゆっくりとまるでプロゴルファーのように行動する。
 そんな奴等に限ってポケットが膨れるからと予備球を持たず、
 次打席へも1本のクラブを持って行き、
 優勝でもしたかのようにグリーン上でジャンプしてガッツポーズをしている。
 後続の組の事は全くと言っていいほど、眼中には無いのだ。
 しかも皆がカップインしたというのにいつまでもグリーン上に立ち、
 スコアカードに記入している。ゴルフをする前に、人間としての常識を疑うのである。

  以外と知られていないマナーとして、
 「同伴競技者のショットやパットの際には、
 その人の視野に自分が入らないようにする」というものがある。
 真正面から観られていると誰もが緊張し、
 右ききの人は右横から、左ききの人は左横から観られていると
 良いショットは生まれないものなのだ。
 もちろん、プロゴルファーを囲むギャラリーは無茶苦茶な場所から食い入るように観ているが、
 素人ゴルファーとプロでは、練習量や集中力が違うのである。
 それを素人ゴルファーに求めること自体が、無理だということだ。

  グリーン上に白球が乗った時には、速やかにマークをし、同伴競技者のライン上を踏まず、
 そのパットの際には自分の影をライン上に置いてはならない。
 又、プレイ者とカップを結んだ延長線上に居ることもタブーなのである。
 ご存知のようにドライバーでの1打も10cmのパッティングも1打は1打であり、
 プロでも『パット is マネー、ドライバー is ショー』と言うくらいにシビアである。
 握り方やパター自体を替えたり、時には『イップス病』にかかったりするのだ。
 まぁ素人がイップス病にかかる事は少ないと思われるが、
 それだけ集中している証拠なので、
 同伴競技者のライン上を侵害しては成らないと言うことである。

  アイアンを使用した時にできるディボット跡を直すことも大切である。
 これはプレー上のやむを得ないフェアウェイの破損であるが、
 傷めっ放し、汚しっ放しは、大人の人間がやることではない。
 ディボット跡には、
 後続のプレーヤーがナイスショットしたボールが入ってしまうかもしれないし、
 せっかくのショットが台無しだと思うと、
 腹立たしさで次のショットが悪くなってしまうのだ。

  そんなふうに想像力を働かせたり、責任感を覚えることは、
 人への思いやり以前のこと、
 ゴルフ場で遊ぶ者に欠かせない資質であり、義務である。
 ばらばらにちぎれた芝を戻した場合でも「目土」すれば、
 芝は枯れて腐って次に育つ芝の養分になる。
 戻す芝が見当たらないディボット跡の凹みも、
 目土砂があれば平らに修復することができるのである。

  バンカー内を歩けば足跡ができ、アドレスで足場を作れば深い足跡ができる。
 エクスプロージョンショットをすれば砂がえぐれてしまう。
 これらの跡をきちんと均して出る事は、
 ゴルフ規則第1章でプレーヤーの必須の務めとして勧告されているのだが、
 これが最近は守られていない。

  確かに後続組が追いかけてくると、慌て急ぐことになるが、
 これらの事をしても後続組は文句を言う者はいないのだ。
 それよりもパーオンしようと届きもしないのに待っていたり、
 下手クソなくせにまるでプロゴルファーのようにノンビリと歩いているのが頭にくるのだ。
 何回も素振りを繰り返し、終わったかと思えばワッグルが終わらない。
 思わず「ファーッ!」と叫びたくなるような気分だ。
 ショットの時には“落ち着いて”、
 移動の時には“速やかに”を基本としなければならない。

  「ゴルフは自分が審判」というプレーヤーの良心と
 そのプレーヤー同士の信頼によって成り立っている。
 ましてや「マナー」という常識で成り立ったスポーツなのである。
 わたしたちがプレーをする際、どういう心構えが必要なのだろうか。
 いや、決して構える必要は無く、人間の常識で行動すれば、
 きっと紳士的なスポーツだと理解されるのである。
 わたしは、これを読んでるあなたが、この4つの柱を胸に刻み、
 次回こそは紳士であれ、と願うのである。