某月某日早朝、出勤途中でたばこを買おうと、とあるコンビニに立ち寄った。

 私が車を止めたすぐ横で、二十歳前後の女の子が携帯を肩に挟み、

 車止めにカップ入りのヨーグルトを置いて、バッグの中を必死にかき混ぜている。

 よく見ると、彼女のバッグとジーンズにヨーグルトがかかっている。

 そして今にも泣き出しそうな顔をしながら

 「ティッシュが見つからないの!」と携帯に向かって叫んでいる。

 彼女がバッグからティッシュを見つけるのに手こずっているのは、

 携帯を肩に挟んでいることが原因なのは私の目から見れば一目瞭然であった。

 「一旦切ってかけ直すという発想は出てこないのだろうか…」

 などと思いながら、自販機が売り切れだったため、店内でたばこを買い店を出てくると、

 その彼女は真剣な顔で携帯を両手で持ちなにやら操作している。

 どうやら何かの理由で通話が切れてしまったらしい。

 バッグとジーンズのヨーグルトはそのままだった。

 そして、ひとしきり携帯の操作を終えるとまたぞろ携帯を肩に挟み、

 バッグの中身の探索を再開した。

 そしてさっきまでの真剣な表情から、

 また泣き出しそうな表情に戻り携帯に向かってこう言った。

 「やっぱりティッシュが見つからないの!」

 いったいあのお猿さんはどこで携帯を拾ったのだろうか